喫煙と血清sFas値との関連

玉腰暁子


 喫煙は、肺や他の器官臓器に軽度ですが持続性慢性炎症を生じさせます。活性化された免疫細胞は炎症の初期ならびに後期ステージで重要な役割を果たします。近年、可溶性Fas(sFas)がこれら活性化された免疫細胞の細胞死(アポトーシス)経路に干渉することがわかり、炎症反応抑制に重要な役割を果たしていると考えられるようになりました。そこで、JACC Study内症例対照研究で測定されたsFas値と喫煙との関連を男性対照群で比較することにしました。この結果は、専門誌(Mutation Research 2009;679:79–83)に報告しました。


 今回の検討では、コホート内症例対照研究のために対照群(おおむね健康と考えられるグループ)として選ばれた男性を対象として、測定したsFas値とベースライン時の自己申告による喫煙状況との関連を検討しました。


喫煙者では平均sFas値が非喫煙者に比べ高い

 喫煙習慣と関連していたりsFas値と関連する可能性があると考えられる地域、年齢、BMI、飲酒状況、運動(歩行)状況、教育歴、婚姻状況、緑黄色野菜の摂取を統計学的に調整して喫煙習慣別のsFas平均値を計算しました。図に示すとおり、その結果、非喫煙者に比べ、喫煙者、禁煙者ではsFas値が高く、さらに禁煙者に比べ喫煙者でより高いことがわかりました。しかし、喫煙者を1日の喫煙本数により分けて同様にsFasの平均値を算出したところ、20本/日喫煙までは増えましたが、それ以上喫煙しているものではほとんど差がなく、喫煙量が増えればsFas値が増えるという量反応関係ははっきりしませんでした。


 今回の検討では、おおむね健康である成人男性では、喫煙がsFas値の増加と関連しているという結果が得られました。喫煙は体内で炎症反応を惹起し、その過程で免疫細胞が活性化されます。sFasはこの免疫細胞の細胞死経路に関与し、炎症を抑制するため、反応性に増加している可能性があります。喫煙量が増えるほどsFasが増加するという量反応関係ははっきりとは認められませんでしたが、喫煙量がそのまま体内の炎症の程度とは関連しないことを示しているのかもしれません。

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