メタボリックシンドローム構成要素と血清sFas値との関連

玉腰暁子


 アテローム性動脈硬化症は近年、炎症疾患の一つと理解されはじめており、疫学研究でも炎症とその後の心疾患リスクの上昇が報告されています。炎症の過程では、可溶性Fas(sFas)が細胞死(アポトーシス)経路に関与する可能性があり、腎疾患患者でsFas値が高いと将来の心疾患リスクが増加すするとの報告もあります。


 しかし、一般集団で、sFas値と代謝関連危険因子(肥満、高血圧など)がどのように関連しているかは不明です。そこで、JACC Study内症例対照研究で選ばれた対照群中におけるこれらの因子とsFas値との関連を検討し、専門誌に公表しました(Eur J Clin Invest. 2010;40:527-33)。


 JACC Study内症例対照研究で選択されsFas値が測定された対照のうち、ベースライン時の代謝関連危険因子(肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病)の情報が得られた876例を対象としました。これらの代謝関連危険因子の有無は原則として、健診で計測された値に基づいて判断しましたが、糖尿病に関しては血糖値等を測定していなかったため、自己申告によりました。


 肥満は健診で測定された身長、体重を用いて、Body Mass Index(BMI=体重(kg)/身長(m)2)を算出し、25以上を肥満としました。高血圧は130/85mmHg以上の場合にあり、脂質異常症は中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満(男性)、50mg/dl未満(女性)のいずれかがある場合にありと判断しました。


男性では、肥満と脂質異常症ありでsFas値が高い

 群間比較のため、sFas値は統計学的に地域、年齢、喫煙状況、飲酒状況を調整した平均値を求めました。男性では、肥満(あり群2.42ng/ml、なし群2.19 ng/ml)、脂質異常症(あり群2.34ng/ml、なし群2.19 ng/ml)でsFas値に有意な差を認めました。しかし、女性ではどの群でもありとなしに差はみられませんでした。


男性では、代謝関連危険因子の保有数が多いほどsFas値が高い

 さらに、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病の4つのうち、いくつの要素を保有しているかで群分けし、sFas値を比較したところ、男性では保有数が多くなればなるほどsFas値が高いという結果でした。しかし、女性では差はみられませんでした。


 今回の検討から、一般成人男性では、肥満、脂質異常症がsFas値の増加と関連しているという結果が得られました。また、代謝関連危険因子の保有数が多いほどsFas値が上昇するという正の関連も認められました。しかし、女性では、このような関連はありませんでした。


 アテローム性動脈硬化症の病変では炎症が生じていますので、活性した免疫細胞の細胞死を制御するために反応性にsFasが増加した可能性があります。心疾患患者らを対象とした研究では、患者に抗炎症作用のあるアトロバスタチンを短期間投与したところ、(炎症が抑制され)sFas値も低下したと報告されています。


 今回、男女で結果が異なった理由ははっきりわかりません。しかし、今までにも炎症に関連するCRP値とその後の心疾患との関連を検討したところ、男性より女性で関連が小さかったとの報告や、内頸動脈の肥厚程度とCRP値の関連が男性でしか見られなかったとの報告があります。今後の検討が待たれるところです。

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