日本の高齢者における肥満度と総死亡との関連

玉腰暁子


 肥満と総死亡が関連することはよく知られており、WHOはBody Mass Index(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が25-29.9を過体重、30以上を肥満と定義しています。この基準は、18歳以上の成人に世界共通で適用されていますが、近年、高齢者では過体重は総死亡リスクにならないこと、むしろ肥満より痩せが死亡リスクに関連すること、が報告されています。

 日本では高齢者が急速に増えています。そこで、私たちはJACC Studyのデータを用いて、高齢者における肥満度を総死亡リスクとの関連を検討し、専門誌に報告しました(Obesity 2010;18:362-9)。


 今回の検討では、研究開始時点で65-79歳であった26,747名を対象に平均11.2年追跡をおこないました。追跡期間中に9,256名の方が亡くなっています。研究開始時点のBMI(身長、体重は自己申告値)と総死亡との関連を検討しました。


痩せが総死亡リスクと関連

 ベースライン時のBMIにより対象者を9つの群にわけ、20.0-22.9を基準(=1)として、総死亡リスクを計算しました。男性でも女性でも基準群よりBMIが低い群では有意に死亡リスクが上昇しており、痩せの程度が強くなるほど死亡リスクが高くなりました(最も低い16未満の群の総死亡リスクは男性1.78倍、女性2.55倍)。一方、基準群よりBMIが高いことは男性では総死亡リスクと関連せず、女性では最もBMIが高い群(30以上)でのみ1.24(95%信頼区間1.01-1.52)とリスク上昇と関連しました。これらの結果は、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、睡眠時間、ストレス、教育歴、婚姻状況、緑黄色野菜の摂取、ならびに脳卒中・心筋梗塞・がんの既往歴を調整したものです。また、非喫煙者に限定した場合、運動習慣のあるものに限定した場合、脳卒中・心筋梗塞・がんの既往歴のないものに限定した場合、ベースラインから3年以内の死亡者を除いた場合の検討も行いましたが、結果はほぼ同様でした。


 今回の結果から、日本の高齢者(65歳以上)では、BMIが20から29.9の間で総死亡リスクが低く、それより痩せている場合、痩せの程度が強くなるほど総死亡リスクが上昇することが確認されました。高齢者におけるこのような関係は、他の研究でも報告されています。痩せの人の中には、何らかの病気のために痩せていて、結果的に早くに亡くなってしまったという方も含まれるかもしれません。


 しかしそれだけではなく、痩せた方では栄養分の貯蔵が少なく感染症に弱い可能性も考えられます。実際、今回の検討でも、死因を見ると痩せた方に肺炎が多いという結果でした。

 高齢者において、若年・中年期で知られているような肥満による総死亡リスク上昇がみられなかったことについて、理由ははっきりとはわかりません。可能性としては、肥満による悪影響を強く受けた方々が高齢期に達する前に亡くなってしまったかもしれないこと、高齢期には体重が多いことによるよい影響(たとえば栄養貯蔵)の方が悪い影響より強い可能性、また高齢者では正常体重者でもメタボリックな危険因子を持つ割合が高いこと(そのため見かけ上、過体重者のリスクが小さくなる)などが考えられます。


 私たちの研究では、肥満の指標としてBMIを用いています。しかし、現在は、過脂肪な状態、特に中心性肥満が問題とされていますので、他の指標も用いた検討が必要と思われます。なお、今回の研究は観察研究ですので、痩せている方が体重を増やすことで死亡リスクを低下させられるかどうかについては不明で、そのような働きかけを推奨するものではありません。

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