喫煙、その他の生活習慣の組み合わせと平均余命

玉腰暁子


 喫煙や飲酒といった生活習慣が、総死亡と関連していることはよく知られています。生活習慣は互いに影響し合っていますが、その複合的な影響をできるだけわかりやすい形で示すことは、健康的な生活習慣の重要性を理解していただくためにも重要です。平均余命は、ある年齢の方がその後何年生きられるかを理論的に計算したもので、直感的に理解しやすい数字です。そこで、以前報告したライフスタイルスコア(喫煙、飲酒、運動、睡眠、食事(緑黄色野菜の摂取)、肥満)の6項目の組み合わせ:研究結果の紹介「健康習慣と予防できる死亡」参照)別に、40歳と60歳時点における平均余命を推定しました。ライフスタイルスコアを構成する生活習慣の中でも喫煙は大きな影響を持っていることが知られていますので、喫煙習慣別に他の習慣の数による平均余命推定も行いました。この検討結果は、専門誌(J Epidemiol 2010; in press.)に報告しています。


 ライフスタイルスコアは、1988-90年にJACC Studyのベースラインで収集された調査票より6つの生活習慣(喫煙、飲酒、運動、睡眠、緑黄色野菜の摂取、肥満)について、健康的な習慣(非喫煙または禁煙、非飲酒または1回1合以内の飲酒、1日1時間以上の歩行、1日6.5-7.4時間の睡眠、緑黄色野菜の毎日摂取、BMI(体重(kg)/身長(m)2)18.5-24.9)に1、不健康な習慣に0を与え合計して作成しました。スコアは0-6点に分布し、点数が高いほど健康的な生活習慣であることを示しています。また、喫煙習慣別の検討では、喫煙以外の5習慣について、同様に点数を与え合計しました。対象はJACC Studyに参加してくださっている方のうちこれら情報がすべて得られた62106人で平均追跡期間は14.5年でした。


ライフスタイルスコア値が高いほど平均余命は長い

 40歳時点での平均余命は男性で42.1年、女性で49.5年でした。ライフスタイルスコアが高いほど平均余命は長く、男性では0-2点の方が39.9年、6点満点の方が50.2年と10.3年差があり、女性では同様に46.5年、54.8年で8.3年の差を認めました。60歳時点の平均余命はそれより短くなりますが(全体で男性23.8年、女性30.4年)、ライフスタイルスコアが高いほど平均余命が長いという関係は変わらず、差は男性で9.6年、女性で8.2年でした。


喫煙者では他の生活習慣がよくても非喫煙者で他の生活習慣が悪いものより平均余命が短い

 喫煙者と非喫煙者を比べると、40歳時点の平均余命は、男性喫煙者40.1年、非喫煙者44.2年、女性喫煙者44.9年、非喫煙者49.7年と、非喫煙者の方が長くなっていました(女性の喫煙者は数が少なく、ライフスタイルスコアが5点満点群での平均余命が計算できませんでした)。


 ライフスタイルスコア別にみると、男性喫煙者でライフスタイルスコアが5点満点(喫煙以外はすべてよい生活習慣)のものの平均余命は40歳時点で41.4年で、男性非喫煙者でライフスタイルスコアが0-1点(喫煙はしないがその他の生活習慣は悪い)ものの平均余命43.4年より短くなっていました。同じ関係が60歳時点での平均余命でも観察されました。


 女性では男性ほど大きな差ではありませんでしたが、同様な傾向でした。さらに、ライフスタイルスコアのよいもの(5点満点)と悪いもの(0-1点)の40歳時点と60歳時点での平均余命の差は、男性喫煙者で2.4年、2.2年に対し、非喫煙者では6.8年、7.0年と広くなっており、喫煙者ではその他の生活習慣の影響が小さいことをうかがわせました。


 生活習慣の組み合わせと総死亡との関連は今までにも報告されています。平均余命は直感的に理解しやすい指標です。今回、生活習慣により何年くらい平均余命に差が出るのかが示されたことで、健康的な生活習慣に改善したいと考えている方たちが、より意欲的に取り組むことができるかもしれません。また、どの生活習慣から改善してもよいのですが、影響の大きさを考えると、喫煙者には、まず喫煙をやめることが推奨されます。

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