コーヒー摂取と総死亡・全がん死亡

玉腰暁子


 嗜好品として親しまれているコーヒーには様々な成分が含まれています。その中には健康に害を与えるものがある一方、含まれている抗酸化物質によってがんや炎症を抑制する効果もあると考えられています。がんについては、肝がんや乳がんなど部位によっては、コーヒー摂取によりリスクが下がる可能性が示唆されています。しかし、全体で見るとその健康影響に関しては、人を対象とした疫学的な研究でも一致した結論は出ておらず、特にアジアではまだほとんど検討されていません。そこで、JACC Studyのデータを用い、コーヒー摂取と総死亡、全がん死亡との関連を検討し、専門誌に報告しました(Eur J Epidemiol. 2011;26:285-293)。


コーヒー摂取が多い群で総死亡リスクは低い

 今回の検討では、コーヒーの摂取状況の情報が得られた約97000人の方を対象に、平均16年追跡しました。コーヒー摂取量により1日1杯未満、1杯、2-3杯、4杯以上の群に分け、1杯未満の方たちを基準にして総死亡、全がん死亡のリスクを算出しました。

 男性では総死亡のリスクはコーヒー摂取量が増えるほど下がり、最も摂取の多い4杯以上の群ではリスクは0.80(0.68-0.95)でした。女性では1日4杯以上コーヒーを飲む方たちが少なかったためはっきりしませんが、4杯以上の群では1-3杯の群に比べややリスクが上昇しており(1杯:0.82、2-3杯:0.83、4杯以上;0.89)、女性のコーヒー摂取には適量がある(1日2-3杯まで)のかもしれません。

【図1】コーヒー摂取と総死亡


コーヒー摂取は全がん死亡のリスクを上昇させない

 一方、全がん死亡との関連は男性ではあまりはっきりしませんでしたが、女性では摂取量が多いほどリスクが下がるという有意な負の関連が観察されました。

 これらの傾向は、研究開始から早い時点で亡くなった方を除くなどの検討をしても変わりませんでした。

 今回の結果では、コーヒーを飲むことは総死亡のリスクを下げており、また、がん死亡にも全体で見ると悪い影響を与えているということはなさそうでした。けれどもこの研究から、コーヒーをたくさん飲んだ方が健康によいと結論付けることはできません。研究が始まった約20年前と比べるとコーヒーの飲み方も変わり、大量に飲む人も増えてきていると考えられます。今後も多くの研究を積み重ねていくことが必要です。

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