子どもの数と総死亡

玉腰暁子


 出生率は世界的に減少傾向を示しています。日本でも1人の女性が生涯で産む子どもの数に相当する合計特殊出生率は低く、1990年代半ばからは1.5を切る値となっています。子どもがいることは親としての役割、責任、社会とのネットワーク構築などと関係する他、成人した子どもから受ける社会的・精神的援助も健康によい影響を与えると考えられます。一方で、子どもが多いことは、身体的・精神的ストレスを増加させ、死亡リスク上昇に関連する可能性があります。しかし、これまでのところ子どもの数と総死亡との関連についての検討は多くなく、またその関連は時代や文化等の影響も受けると考えられます。そこで、JACC Studyのデータを用い、子どもの数と総死亡との関連を検討し、専門誌に報告しました(Eur J Public Health 2011; 21: 732-737.)。


子どもの数が少なくても多くても死亡リスクが高い

 最初のアンケートで子どもの数にお答えいただいた約96000人の方を平均14.4年追跡した情報を今回は解析対象としました。子どもが2人のグループを基準にした場合、子どもがいないグループの死亡リスクは男性1.17、女性1.29、子どもが1人のグループでは男性1.13、女性1.16と、わずかですが有意な上昇を認めました。男性では子ども3人まで、女性では4人までは2人のグループとリスクに差がありませんでしたが、男性で4人以上(4人の場合1.16、5人以上で1.25)、女性で5人以上(1.22)では死亡リスクが上昇し、子どもの数と総死亡との関連は少なくても多くてもリスクが上がるU字型となりました。

【図1】子どもの数と死亡


年齢群で関連の程度が異なる

 子どもが1人の場合のリスクは、男女とも年齢が低いグループほど明白でした。一方、子どもが多いことのリスクは年齢が高いグループで認められました。逆にいうと年齢が高いグループでは子どもが多くても死亡リスクが増加する傾向はありませんでした。

【図2】子どもの数と死亡(年齢別・男性)

【図3】子どもの数と死亡(年齢別・女性)


 今回の結果から、日本人における子どもの数と総死亡との関連は、男女とも子ども2人の場合を底とするU字型を示していました。しかし、その傾向は年齢群で異なっていました。調査時点の年齢群の違いは、世代が違うことを意味します。つまり、同じ日本の中でも育ってきた社会・文化的な背景要因が異なると子どもの数が死亡に与える影響が異なる可能性を示しています。たとえば、近年では子どもが多いことは「選択」の結果である可能性が高く、そのことが中年群で子どもが多くてもリスクが増加しなかったことと関連しているのかもしれません。さらに、女性においては、妊娠・出産・授乳期を通じたホルモン動態の変化は循環器系疾患のリスク増加と関連することが知られています。そのため、年齢群による死亡リスクの違いは世代の差以外に高齢女性では循環器疾患死亡が多く中年層ではがん死亡が多い等の年齢階級別死因構造の違いにも影響を受けていると考えられます。

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