昼寝と死亡の関係 -特に循環器疾患死亡に注目して-

田邊直仁



 昼寝と死亡や循環器疾患などの関係については、シエスタという長時間の昼寝をとることが日常的な地中海地域や中南米での研究がいくつか報告されています。これらの研究によれば、昼寝をとる高齢者はそうでない高齢者に比べ死亡しやすかったり、昼寝をとる人では心筋梗塞などの虚血性心疾患にかかりやすかったとの報告がある一方で、逆に虚血性心疾患にかかりにくかったとの報告もあり、昼寝が良いのか悪いのか結論が得られていません。また、昼寝と循環器疾患以外の病気の関係についてはあまり研究されていないようです。さらに、昼寝と死亡や病気の関係について、シエスタが日常的ではない日本などでの研究はほとんどありません。


 そこで、日本人の生活習慣と死亡の関係を研究しているJACC研究によって、昼寝と死亡の関係について検討しました。(Int J Epidemiol. 2010;39(1):233-43.)


昼寝をとる習慣がある人は死亡の危険性が高い!?

 夜間に仕事をされている人などを除いた67,129人の男女を約14年間追跡したところ、9,643 人の方が亡くなられました(内訳:循環器疾患2,852人、 がん3,643人 、循環器疾患・がん以外の死亡2,392人、病気以外の死亡738人)。昼寝をとる習慣があった人21,656人と、昼寝をとらない人45,473人を比べると、昼寝をとる人の方が1.19倍、死亡リスクが高いとの結果でした。死亡の原因別では、循環器疾患で死亡する危険性が1.31倍、循環器疾患・がん以外の死亡では1.26倍、病気以外の死亡では1.28倍、それぞれ高いとの結果が示されました。一方、昼寝とがん死亡の間には明確な関係を認めませんでした。


 循環器疾患を詳しくみてみると、脳梗塞、脳出血、心不全で死亡する危険性が特に高いことがわかりました。


昼寝が病気や死亡の原因になっている?

 寝起きの時間帯には血圧が急上昇したり、血液が固まりやすくなったりすることが知られており、循環器疾患が発症しやすくなると言われています。昼寝をとる人では寝起きが「朝」と「昼寝後」の2回あるので、昼寝をすることで循環器疾患が起きやすくなった可能性もあるかもしれません。


 しかし、今回の結果を詳しく調べてみますと、循環器疾患や循環器疾患・がん以外の病気で死亡した人には、もともと体調が悪かった人が多かったのでは?という可能性を示す結果も得られています。


 つまり、「昼寝をとるのが悪い!」のではなく、「体調の悪い人が昼寝をとっていた」可能性が高いのではないかと考えています。よって、今回の結果から「昼寝をとらないようにしましょう」とお勧めするのではなく、いつもと変わらない生活をしているのに「体調が悪くて昼寝をとらないといけなくなったような人にはなんらかの病気が隠れているかもしれませんので注意しましょう」ということを喚起したいと思います。


 しかし、病気以外の死亡については、たとえば昼寝の寝起きで頭がボーッとしていたり、普段昼寝をとる人がたまたま昼寝をとれなくて眠気が強くなっているような時に、事故などを起こしやすくなっているのでは?という可能性も否定できません。寝起きや眠気が強い時には車の運転や危険な作業をしないよう、十分注意していただきたいと思います。

copy_rihgt_JACC