「生きがい」と総死亡および死因別死亡リスクとの関連

丹野高三


 人生や物事に対してポジティブな感じ方をする人はそうでない人より長生きすることが知られています。「生きがい」は日本人に特有なポジティブな感じ方の一つで、健康の重要な要素と考えられます。

 しかし、「生きがい」と死亡との関係、特に「生きがい」と死因別死亡(がん、心疾患や脳卒中などの循環器疾患、自殺や事故などの外因)との関係はあまり調べられていません。


 私たちは全国45地区、約11万人の方々にご協力いただき、1988~1990年にアンケートにより集められた情報に基づき研究を行っております。


 約13年間追跡調査したデータを分析し「生きがい」と総死亡および死因別死亡との関係について学術雑誌に発表しました

 (Journal of Psychosomatic Research 2009;67:67-75)。


「生きがい」があると答えた人では、総死亡、循環器疾患死亡、外因による死亡の死亡率が低い

 アンケートで「あなたは「生きがい」や「はり」をもって生活しておられますか」という質問に回答していただいた73,272人のうち、「非常にある」または「ある」と答えた人を「生きがい」があるグループ、「ふつう」または「はっきり言えない」と答えた人を「生きがい」がないグループに分類し、「生きがい」があるグループとないグループとの間で死亡率を比較しました。


 総死亡では「生きがい」がないグループの死亡率より「生きがい」があるグループの死亡率が男性で0.85倍、女性で0.93倍であり、「生きがい」があると答えた人はそうでない人より死亡率が低い(長生きする)ことがわかりました。


 死因別にみると、「生きがい」があると答えた人では循環器疾患や外因による死亡が起こりにくいことがわかりました。しかし、がん死亡では「生きがい」があると死亡率が低くなるという関係ははっきりしませんでした。(図1)


なぜ「生きがい」があると死亡率が低くなるのか?

 残念ながら今回の検討ではこの問いに対する明確な回答を提示することはできません。しかしいくつかの可能性が挙げられます。


1) 「生きがい」がある人では健康に良い生活をしているため長生きする可能性がある。

 2) 持病があると「生きがい」があると感じるのが困難となり、また持病のために早く亡くなる可能性がある。

 3) 「生きがい」がある人ではストレスに対しうまく反応でき、また動脈硬化の進行が抑えられるため、循環器疾患死亡が起こりにくい可能性がある。



この研究の意義

 本研究では日本人に特有なポジティブな感じ方である「生きがい」の健康に及ぼす好影響が明確に示されました。 「生きがい」を持って生活を送ることは皆さんの健康にとって良い影響を及ぼす可能性があります。

copy_rihgt_JACC