日本人の食生活と胃がん死亡との関連

徳井教孝


 胃がんの発生率や死亡率は世界的にみても徐々に減少していますが、日本ではいまだに多いがんの1つです。胃がんの発生には食生活が関連しているといわれています。たとえば、果物や野菜の摂取が少ないと胃がんのリスクが高くなることが報告されています。

 また、塩漬けされた食品も胃がんのリスクを高めるといわれています。


 日本人について日常の食生活状況を調べ、その後その人達の健康状態を観察してどういう食生活をした人が胃がんの発生や死亡のリスクが高くなるという研究はあまり多くないため、今回、北海道から九州まで約11万人の一般の人の日常の食生活を調べ、その後の胃がん死亡との関連を検討し、専門誌 J Epidemiol 2005; 15 Suppl 2: S98-S108. に公表しました。


 日本全国の45の地域において、40歳から79歳までの一般住民約11万人を対象に、1988年から1990年まで、食生活調査を含む健康調査を行いました。


 食生活調査は33の食品について、その摂取頻度(ほとんど毎日食べる、1週間に3-4回、1週間に1-2回、1ヶ月に1-2回未満、ほとんど食べない)をたずねました。また、味噌汁についても摂取頻度と、ほとんど毎日摂取している場合はその杯数を記入してもらいました。対象者の健康状態については健康調査を実施した後、1999年まで、死亡された人についてその死因を調べました。そして、健康調査の時点での各食品の摂取頻度ごとに胃がんの死亡率を算出して比較しました。


 健康調査から1999年までの間に、859名(男性574名、285名)の人が胃がんで死亡されました。緑黄色野菜や果物の摂取頻度と胃がんの死亡率の間には関連はみられませんでした。また、干し魚などの塩蔵食品や味噌汁に関しても胃がんの死亡とは関連が認められませんでした。


女性では、レバーの摂取と胃がん死亡との関連がみられました

 レバーを食べない人の胃がんの死亡のリスクを1とすると、1週間に3-4回食べる人、ほとんど毎日食べる人の死亡リスクはそれぞれ2.0倍、3.2倍となり、有意に高いリスクが認められました。(図1)


 また、西洋スタイルの朝食をされている人はそうでない人に比べ、胃がん死亡リスクが低く、特に男性では0.5倍、つまり、リスクが半分でした。(図2)

 コーヒー摂取は男性では胃がんリスクが低く、女性では高いことが示されました

 食生活と胃がんの関連を検討する場合、個々人の食生活を正しく評価することが重要となります。多くの対象者を調査する疫学研究では、食生活調査は簡便な方法が望まれますが、一方、簡便な方法では個人の食生活状況を正確に把握することが難しくなります。また、一度の食生活調査だけでは、その後に食生活が変わっていても考慮することができません。


 これらの理由で、食生活に関する疫学研究の結果は必ずしも一致しない場合があり、明確に結論を出せないことがあります。


 今回の研究では、西洋スタイルの朝食摂取やコーヒー摂取は男性で胃がんの死亡リスクを減少させることが示唆されました。また、女性ではレバー摂取やコーヒー摂取は、胃がん死亡のリスクが高くなりました。西洋スタイルの朝食にはコーヒーの飲用が関連している可能性が考えられますが、コーヒー摂取に関しては女性では逆の結果でした。今回の研究結果から胃がん死亡を予防するための食生活について結論を得るにはまだ不十分と考えられます。食生活と胃がんの関連を明らかにするためには、食生活調査方法をより改善し研究を続けることが必要です。

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