カルシウム摂取と循環器死亡-JACC Studyからの検討-

梅澤光政


 カルシウムは骨や歯の大切な成分であるだけでなく、その摂取が血圧を安定させる働きがあることがわかっています。一般に日本人は欧米人にくらべてカルシウムの摂取量が少ないのですが、このことが循環器疾患による死亡にどれだけ影響をするのか、約10年間の追跡調査をもとに分析しました。そしてその結果を国際専門誌に発表しました(Stroke誌 37巻20-26 2006年)。


乳製品からのカルシウム摂取は脳卒中の死亡を少なくする

 アンケートで日々の食生活についてお尋ねし、その結果から1日あたりのカルシウムをとっている量を求めました。その量に応じてアンケートに答えた人を少ない人から多い人へ5つのグループに分け、その後10年の間に循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞)で死亡した人の割合を比べました。


 1日にとっているカルシウムの全体量と循環器疾患による死亡との関係はありませんでした。しかし図に示すように、乳製品からのカルシウムをよくとっているグループでは、最もとっていないグループに比べ、男女ともに脳卒中による死亡の危険度が0.5~0.6倍と低下していました。心筋梗塞ではこの傾向は見られませんでした。


なぜ乳製品からのカルシウム摂取が脳卒中による死亡を防ぐのか?

 乳製品からのカルシウムが脳卒中のリスクの低下に関係していたのは、カルシウムの血圧低下作用に加えて、「乳製品からのカルシウムは吸収率がよい」「カルシウム摂取が血小板凝集能を下げる」などのことが影響していると考えられます。


 通常、食事からとれるカルシウムは食事に含まれている量よりも大幅に少なくなります。これは腸の中でカルシウムが他の物質と結合してしまうためです。しかし、乳製品に含まれているたんぱく質はこれを防ぎ、カルシウムを効率よく吸収できることがわかっています。この他にも、乳製品に含まれているたんぱく質による血圧の低下作用なども関係している可能性があります。


この研究の意義

 今回の研究により、欧米人に比べてカルシウムをとる量が少ない日本人において、乳製品をとることが脳卒中死亡を予防する上で大切であることが示されました。

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