ナトリウム・カリウムの摂取と循環器死亡-JACC Studyからの検討-

梅澤光政


 ナトリウム・カリウムの摂取が脳卒中・虚血性心疾患などの循環器疾患の発症やそれによる死亡のリスクに関係することが欧米での研究で明らかになってきました。しかし、欧米人に比べてナトリウム摂取量の多い日本人についてそのような関係がみられるかは明らかになっていません。そこで、ナトリウム・カリウムの摂取が循環器疾患による死亡にどれだけ影響をするのか、約10年間の追跡調査をもとに分析しました。そしてその結果を国際専門誌に発表しました(American Journal of Clinical Nutrition誌 88巻195-202 2008年)


ナトリウム摂取は脳卒中による死亡を増加させる

 アンケートで日々の食生活についてお尋ねし、その結果から1日あたりのナトリウムとカリウムの摂取量を求めました。摂取量の少ない人から多い人へ5つのグループ(5分割)に分け、その後、循環器疾患(脳卒中、虚血性心疾患)で死亡した人の割合を比べました。 1日にとっているナトリウムの量が最も多いグループでは、最も少ないグループに比べ、脳卒中による死亡のリスクが男性では約1.8倍に、女性では約1.7倍に増加していました。虚血性心疾患ではこの傾向は見られませんでした。


カリウム摂取は心筋梗塞による死亡を減少させる

 同様の方法でカリウム摂取についても調べたところ、女性において1日にとっているカリウムの量が最も多いグループでは、最も少ないグループに比べ、虚血性心疾患による死亡のリスクが約0.4倍と減少していました。男性でもリスクの低下は見られましたが、その差は統計学的に有意ではありませんでした。脳卒中ではこのような傾向は見られませんでした。


日本人では、BMIによらず、ナトリウムの摂取は脳卒中による死亡を増加させる

 欧米の研究では肥満の者についてのみ、ナトリウムの摂取が脳卒中による死亡のリスクを増加させると報告されています。しかし、今回我々が行った研究では、Body Mass Index (BMI) が25.0kg/㎡以上のグループでもそれ未満のグループでも、ナトリウムの摂取が脳卒中による死亡のリスクを増加させることが示されました。

 このことは、日本人では肥満、非肥満に関わらずナトリウムの摂取を減らすことが脳卒中による死亡を減らす上で有効であることを示しています。


この研究の意義

 日本人において、ナトリウムの摂取を減らすことが脳卒中による死亡を減らす上で大切であることが示されました。また、カリウムの摂取を増やすことが虚血性心疾患による死亡を減らす上で有用であることも示されました。

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