飲酒と大腸がんリスク

若井建志


 大腸がんと関係する可能性がある要因として、脂肪や肉類の取り過ぎや食物繊維の不足など、食事に関わる要因が注目されていますが、飲酒についてはあまり関心が向けられていません。

 しかし、飲酒は大腸がんの危険性を高めるかもしれないと指摘されています。日本におけるアルコールの消費は1990年代まで急速に増加し続けましたので、 1990年代前半までみられた日本の大腸がん発生率の増加(人口の高齢化を考慮)には、アルコール消費の増加も関与していた可能性があります。そこで1988~90年に、全国22地区でアンケートにより飲酒についての情報を集め、研究にご協力いただいた方々を約7年半追跡したデータを分析しました。詳しい結果は学会誌に発表しておりますが (Journal of Epidemiology 15巻 (supplement II) S173-S179ページ 2005年)、ここではその概要をまとめました。


男性飲酒者・禁酒者で結腸がんの危険度が高くなっていました

 大腸の中でも口に近い部分(結腸)と肛門に近い部分(直腸)とでは、がんの危険度に生活習慣が及ぼす影響が違うと言われています。そこでこの研究でも、結腸と直腸に分け、お酒を飲まない人を1とした、お酒をやめた人、現在飲んでいる人の危険度を計算しました。すると図のように男性では、お酒をやめた人、現在飲んでいる人ともに、お酒を飲まない人と比べて危険度が約2倍になっていました。女性でもお酒をやめた人ではやや危険度が高めでした。


直腸がんの危険度は飲酒者・禁酒者でもとくに増加していませんでした

 一方、肛門に近い側の直腸では図のように、お酒を飲まない人に比べ、お酒をやめた人、現在飲んでいる人の危険度がとくに高いことはありませんでした。


 以上、大腸がんのうち、結腸がんの危険度がお酒を飲んでいる、またはやめた男性で高くなっていました。大腸がんは結腸がん、直腸がんともに発生率が増えてきましたが、結腸がんの方が増加は急です。男性ではアルコール消費の増加が結腸がん増加の理由の1つである可能性もあり、大腸がん予防のためにもお酒の飲み過ぎには注意すべきと思われます。

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