喫煙と結腸がん・直腸がん

若井建志


 喫煙は肺がん、食道がんをはじめいくつかのがんの危険性を高めますが、喫煙と大腸がん(大腸がんはできる場所により、結腸がんと直腸がんに分けられます)との関係はこれまであまり言われていませんでした。


 最近、欧米を中心に、 40年以上にわたる長期の喫煙が大腸がんの危険性を高めるとの研究報告がみられるようになりましたが、そうではなかったという研究もあり、本当に関係があるのどうかはまだわかっていません。そこで1988~90年に全国24地区でアンケートにより情報を集め、研究にご協力いただいた方を約7年半追跡したデータを分析しました。詳しい結果は学会誌に発表しておりますが(Journal of Epidemiology 13巻 323-332ページ 2003年)、ここではその概要をまとめました。


男性の喫煙者で結腸がんの危険度がわずかに増加

 アンケートでおたずねした喫煙習慣をもとに、もともと喫煙しない場合(図の「吸わない」―非喫煙者)を1とした大腸がんにかかる危険度を、禁煙者(「やめた」)、現在喫煙者(「吸っている」)について計算しました。計算は男性の結腸がん、女性の結腸がん、男性の直腸がんについて別々に行いました(女性の直腸がんは禁煙者・現在喫煙者で直腸がんになられた方が非常に少なかったため、結果は示しておりません)。図のように結腸がんにかかる危険度は、男性の現在喫煙者でもともと喫煙しない人の1.23倍高いことがわかりました。ただし現在喫煙者であっても、女性の結腸がんや男性の直腸がんについては危険度の上昇はほとんどみられませんでした。また禁煙者についても結腸がんや直腸がんのリスク増加は認められませんでした。

【図1】喫煙習慣別にみた大腸がん危険度


結腸がん危険度と1日の喫煙本数、喫煙年数との間にはあきらかな関係はみられない

 さらに男性の現在喫煙者では非喫煙者よりも結腸がんの危険度がわずかながら高かったことから、男性に限定し、もともと喫煙しない場合(図の「吸わない」―非喫煙者)を1とした大腸がんにかかる危険度を、1日の喫煙本数別、喫煙年数別に計算しました。肺がんなど、喫煙が危険性を高めることが知られている種類のがんでは、喫煙本数が多いほど、また喫煙年数が長いほど危険度が高まります。しかし今回の分析では、そのようなあきらかな関係はみられず、喫煙本数や喫煙年数が中ぐらいのところで危険度が高くなっていました。


 図には示していませんが、男性直腸がんについても、危険度と喫煙本数や喫煙年数との間にはあきらかな関係は認められませんでした。また喫煙年数40年以上のグループは、他の研究で大腸がんの高い危険性が報告されていましたが、今回の解析では結腸がんや直腸がんのリスクはほとんど増加していませんでした。

【図2】1日の喫煙本数および喫煙年数にみた結腸がん危険度(男性)


 以上、男性の喫煙者にかぎり結腸がんの危険度が20%ほど高くなっていましたが、喫煙本数が多いほど、また喫煙年数が長いほど危険性が高まるという関係はみられなかったことから、今回の結果からは喫煙と大腸がんとの関連はそれほど強くないと考えられました。

 しかし、日本においても他の研究では喫煙による大腸がんの危険性上昇が報告されています(厚生労働省多目的コホート研究、高山コホート研究)。したがってさらに研究を積み重ね、総合的に検討することが必要と考えられます。

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