日本人集団における、血液中のカロテノイドと大腸がんリスクの関係                       ― カロテノイドの効果の男女差 ―

若井建志


 これまでの研究で、野菜や果物を多く食べることが大腸がんにかかるリスクを低下させることが示されています。そして、野菜や果物に多く含まれる、カロテノイドという抗酸化作用を持つ一連の成分が、がんに対して予防効果があるのではないかと考えられてきました。


 しかし、カロテノイド自体が大腸がんリスクに及ぼす影響を検討した研究はまだ少ないのが現状です。さらに最近では、野菜や果物を多く食べることが、かならずしも大腸がんの予防にはつながらないとするコホート研究の結果も発表されており、カロテノイドと大腸がんとの関係について、さらに調べることが必要と考えられます。


 そこで1988~90年に、全国24地区で血液をご提供いただいた方について、血液中のカロテノイドの量と大腸がん発生の危険度との関係を検討しました。詳しい結果は学会誌に発表しておりますが(Nutrition and Cancer 51巻 13-24ページ 2005年)、ここではその概要をまとめました。


男性では、血液中のカロテノイドが多いグループで大腸がん危険度が低下

 血液中のカロテノイドの量により、対象者を人数がほぼ同じ3つのグループに分けました。その上で、カロテノイドの量がもっとも少ないグループを1とした大腸がんにかかる危険度を、血液中のカロテノイド量の他の2グループについて計算しました。


 図のように、血液中のカロテノイド全体(「総カロテノイド」)の量が中間(中間1/3)またはもっとも多いグループ(上位1/3)の大腸がん危険度は、量がもっとも少ないグループの0.19-0.34倍で、血液中のカロテノイドが多いグループで大腸がんにかかる危険度は低下していました。カロテノイドの中の1グループで、緑黄色野菜に多く含まれるカロテン全体(「総カロテン」)についても、血液中の量が多いグループで大腸がん危険度が低いという傾向は同じでした。

【図1】血液中のカロテノイドの量別にみた大腸がん危険度(男性)


女性では、血液中のカロテノイドが多いグループで大腸がん危険度がむしろ高い

 一方、女性で男性と同様の検討を行うと、図のように、血液中のカロテノイド全体(「総カロテノイド」)の量がもっとも多いグループ(上位1/3)の大腸がん危険度は、量がもっとも少ないグループの2.47倍で、男性とは逆に、血液中のカロテノイドが多いグループで大腸がん危険度はむしろ高くなっていました。カロテノイドの1種であるアルファカロテンでも、血液中の量がもっとも多いグループで大腸がんの高い危険度がみられました。また同じカロテンでもベータカロテンでは、血液中の量が中間(中間1/3)のグループで大腸がん危険度が低く(量が最少のグループの0.24倍)、量が最高のグループでは大腸がん危険度がむしろ高くなる(量が最少のグループの2.00倍)傾向でした。

【図2】血液中のカロテノイドの量別にみた大腸がん危険度(女性)


 以上、血液中のカロテノイドの量が多いグループは、男性では大腸がんの危険度が低下していましたが、女性ではむしろ危険度が高い傾向がみられました。女性では男性よりも、血液中のカロテノイドの量が全体に多いので(それぞれ人数が1/3になるようにした場合、もっとも高い群の総カロテン量を比べると女性は男性の約2倍となっています)、女性では一部で量が多すぎたのかもしれません。


 また食物のカロテノイドは、油と同時に食べると腸での吸収が良くなり、血液中の量も多くなりますが、脂肪を多くとることは大腸がんのリスクを高めるとの説がありますので、血液中のカロテノイドの量が多いグループの中には脂肪を多くとりすぎていた方がいらっしゃったのかもしれません。


 今回の研究でみられた、カロテノイドの効果の男女差やその理由については、今までに他の研究では報告されていないことから、さらに別の集団で確認することが必要です。現時点では関係が確実でないことに加え、肺がんにでは合成のベータカロテン(サプリメント)を長期間飲むと、逆に肺がんの発生が増えるという研究結果も出ていますので、現状ではサプリメントでベータカロテンを大量に飲むことは控えた方がよいと考えられます。

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