JACC Studyにおける食物せんいと大腸がんリスク

若井建志


 食物せんいの摂取が大腸がんリスクを低下させるとの仮説は1970年代に提唱され、疫学研究・動物実験の両面で検討されてきました。しかしコホート研究(追跡調査)の多くでは、食物せんいの大腸がん予防効果は示されていません。これまでに食物せんいの大腸がん予防効果を検討したコホート研究の多くは欧米で行われており、日本で行われているものは1つのみです。日本は食物せんいの摂取量が少なく、かつ世界中でも大腸がん発生率が高い国の 1つであることから、日本で食物せんいと大腸がんリスクとの関連をコホート研究で検討することは大変有意義と考えられます。


 そこでJACC Studyにおいて、1988~90年に全国22地区でアンケートにより食事についての情報を集め、研究にご協力いただいた方を約7年半追跡したデータを分析しました。詳しい結果は学術雑誌に発表しておりますが(Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 16巻 668-675ページ 2007年)、ここではその概要をまとめました。


食物せんいをとる量が多い方で大腸がんの危険度低下がみられました

 アンケートで集めた食事についてのデータをもとに、食物せんいをとる量により、研究参加者を人数がほぼ同じ4つのグループに分けました。その上で、食物せんいをとる量がもっとも少ないグループを1とした大腸がんにかかる危険度(相対危険度)を、食物せんい摂取量の他の3グループについて計算しました。図のように食物せんいをとる量が多いほど、大腸がんの危険度は低くなり、食物せんいをもっとも多くとるグループ(上位1/4)の大腸がん危険度は、とる量がもっとも少ないグループの0.73倍で、食物せんいをとる量が多いほど大腸がんの危険性が低下する傾向がみられました。

【図1】食物せんいをとる量別にみた大腸がん危険度


食物せんいによる危険度低下は、大腸がんの中でも結腸がんでみられました

 大腸がんの中には、大腸の肛門寄りにできる直腸がんと、より口側にできる結腸がんがあり、食事など生活習慣の影響は、結腸がんと直腸がんとでは異なると言われています。そこで食物せんいをとる量と危険度との関係を、結腸がんと直腸がんに分けて検討したところ、食物せんいによる危険度低下は、大腸がんの中でもとくに結腸がんでみられました。

【図2】食物せんいをとる量別にみた結腸がん・直腸がん危険度


 以上、食物せんいを多くとる方では大腸がん、とくに結腸がんの危険度が低下していました。ヨーロッパの大規模国際コホート研究においても、今回の研究と同じように食物せんい摂取と大腸がんリスク低下との関係が示されていることから、コホート研究では食物せんいの大腸がん予防効果は示されないとも言えず、さまざまな国・集団における研究がさらに必要と考えられます。

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