コーヒー飲用と肝臓がん死亡リスクとの関係
              ―C型肝炎ウイルスへの感染を考慮した場合―

若井建志


 近年、コーヒーを飲むことが肝臓がんリスクを低下させる可能性があるとする疫学研究結果がいくつか報告されています。しかし多くの研究では、研究参加者の肝炎ウイルスへの感染が考慮されていません。日本ではC型肝炎ウイルスへの感染が、肝臓がんの主要な危険因子であることから、その影響を考慮してコーヒーと肝臓がんリスクとの関係を検討することが望まれます。


 そこでJACC Studyにおいて、1988~90年にコーヒー摂取その他のアンケートにお答えいただき、かつ研究用に血液をご提供いただいた方のうち、1999年までに肝臓がんで亡くなられた方96名と、肝臓がんで亡くなられた方と性別、年齢グループ、C型肝炎ウイルスへの感染の有無(抗体で判定)を一致させた3,444名の間で、コーヒーを飲む量を比較しました。詳しい結果は学術雑誌に発表しておりますが(Br J Cancer 97巻 426-428ページ 2007年)、ここではその概要をまとめました。


C型肝炎ウイルスへの感染を考慮しても、コーヒーを多く飲むグループで肝臓がんリスクが低下

 C型肝炎ウイルスへの感染状況を考慮した上で、コーヒーを飲む量と肝臓がん死亡リスクとの関連を検討しました。検討ではコーヒーを飲まないグループを1とした、肝臓がん死亡の危険度(相対危険度)を、コーヒーを飲む量が1日1杯未満のグループ、1日1杯以上のグループでそれぞれ求めました。図のようにコーヒーを飲む量が多いほど、肝臓がん死亡の危険度は低くなり、1日1杯以上飲むグループの危険度は、飲まないグループの約半分でした。

【図1】コーヒーを飲む量と肝臓がん死亡の危険度(C型肝炎ウイルスへの感染状況を考慮)


C型肝炎ウイルス感染者に限定した場合でも、コーヒーを多く飲むグループでは肝臓がんリスクが低下

 さらにC型肝炎ウイルスに感染している方(抗体陽性者)に限定して、上記と同様の分析を行ったところ、やはりコーヒーを多く飲むグループで肝臓がん死亡リスクが低下する関連が認められ、 1日1杯以上飲むグループの危険度は、飲まないグループの0.39倍でした。

【図2】コーヒーを飲む量と肝臓がん死亡の危険度(C型肝炎ウイルス感染者)


 以上、C型肝炎ウイルスへの感染を考慮しても、コーヒーを多く飲むグループでは肝臓がんリスクが低下していました。ただし、コーヒーを飲むことは他の生活習慣などとも関連しているため、コーヒーを多く飲むことがC型肝炎ウイルスに感染した方の肝がん死亡を予防するかどうかは不明です。 C型肝炎ウイルスが関与する肝臓がんの予防にコーヒー摂取が有用かどうかを明らかにするためには、ウイルス感染者において、コーヒーを飲む量を増やすことで実際に肝臓がん発生が減るかどうかを検討する研究(介入研究)が必要と考えられます。

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