腎がんによる死亡の危険因子

鷲尾昌一


 日本人における腎がんの死亡の危険因子を明らかにするために日本全国の45の地域で約11万人の方にコホート研究の参加にご協力をいただき、 1988~90年にアンケート調査を行ました。


 今回、約10年間追跡を行った結果、腎がんの危険因子としていくつかの要因が明らかになりました。この結果は日本疫学会の学誌(Journal Epidemiology 2005;15: S203-S211)に掲載されました。


1.腎がんの危険因子としてどのような要因が考えられていますか?

 腎がんに罹る人は西欧や北欧、北米の国々に多く、アジアでは少ないことが知られています。同じ日本人でもハワイに移住した日本人は日本居住の日本人に比べ、腎がんに罹る人が多いことから西洋型の生活習慣などの環境要因が腎がんのリスクになっている可能性があります。


2.性別と年齢は腎がんの死亡のリスクと関係しますか?

 今回の研究では 10歳年齢が上がると腎がんの死亡のリスクは1.1倍上昇し、男性は女性に比べ4.6倍腎がんの死亡のリスクが高いことがわかりました。年齢が高くなるほど腎がんで死亡しやすく、男性は女性よりも腎がんで死亡しやすいことがわかりました。この結果は欧州や北米での研究結果と同じです。


3.以前に罹ったどのような病気が腎がんの死亡のリスクと関係しますか?

 今回の研究では、高血圧に罹ったことのある人は高血圧に罹ったことのない人に比べ 2.0倍腎がんの死亡のリスクが高いことがわかりました。この結果は海外での研究結果と同じです。


4.どのような食生活が腎がんの死亡のリスクと関係しますか?

 今回の研究の結果では、脂っこい食事を好む人は好まない人に比べ2.6倍腎がんの死亡のリスクが高く、紅茶を1日に3杯以上飲む人は紅茶を飲まない人に比べ13.6倍腎がんの死亡のリスクが高いことがわかりました。一方、イモ類を週に3回以上食べる人では腎がんの死亡のリスクは月に1-2回未満しか食べない人にくらべ56%リスクが減少していました。


 欧米の研究では紅茶で腎がんのリスクが上昇するという報告はありません。紅茶で腎がんの死亡のリスクが上昇するのは紅茶そのものが原因というよりも欧米型の食生活が腎がんのリスクを上昇させると考える方が妥当だと思います。脂っこい食事を好む人は欧米型の食生活を行っていると考えられます。一方、イモ類を食べる頻度の多い人は伝統的な日本食を中心とした食生活を行っていると考えられます。


5.まとめ

 腎がんで死亡した方は約11万人をほぼ10年間追跡しても、48人とわずかでした。このため、研究結果として確定的な結論を出すことは困難で、リスクの上昇を認めたけれども統計学的に有意ではない(はっきりとリスクと断定できない)要因も少なくありませんでした。

 また、今回の結果の解釈にも腎がん発生のメカニズムや海外での研究結果との整合性を考えるなどの必要があります。これからも研究を継続し、明らかな結果をお示しできるように努力していきます。

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