腎がん(腎細胞がん)発症に対する高血圧、その他既往歴のリスク

鷲尾昌一


 日本人における腎がん発症の危険因子を明らかにするために日本全国の45の地域で約11万人の方にコホート研究の参加にご協力をいただいたJACC Studyのデータを解析しました。 この研究では、1988~90年にアンケート調査を行っていますが、24地域では、がんの罹患が把握されていました。


 今回、この24地域に在住された約6万人の方々を約8年間追跡した結果、腎がんの危険因子としていくつかの要因が明らかになりました。

 この結果は財団法人国際文化交流事業財団の雑誌(International Medical Journal 15(5): 343-347, 2007)に掲載されました。


1.以前に罹ったどのような病気が腎がんの発症と関連しますか?

 いくつか検討した既往歴のうち、高血圧、腎臓病が腎がん発症の危険因子でした。高血圧に罹った人は罹ったことのない人の4.3倍、腎臓病に罹った人は罹ったことのない人の4.4倍も腎がんに罹りやすいことがわかりました。糖尿病と腎がん発症のリスクとの関係も検討しましたが、糖尿病は腎がん発症のリスクを1.7倍上昇させるものの統計学的に有意ではありませんでした。


2.血圧が高いと腎がんに罹りやすいですか?

 高血圧に関しては、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも血圧のレベルが上昇するにつれて腎がん発症のリスクが上昇しました。収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg未満の人に比べ、収縮期血圧が140mmHg以上150mmHg未満の人は1.6倍、収縮期血圧が150mmHg以上の人は4.3倍も腎がんに罹りやすいことがわかりました。拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg未満の人に比べ、拡張期血圧が85mmHg以上90mmHg未満の人は2.0倍、拡張期血圧が90mmHg以上の人は4.8倍も腎がんに罹りやすいことがわかりました。


3.まとめ

 腎がんは、今回、約6万人の方を8年間追跡しても40人しか発症しなかった稀ながんです。このため、研究結果として確定的な結論を出すことは困難で、糖尿病のようにリスクが上昇していても統計学的に有意ではない(はっきりとリスクと断定できない)要因も少なくありませんでした。


 今回の結果の解釈にも腎がん発生のメカニズムや海外での研究結果との整合性を考えるなどの必要があります。何らかの腎臓の異常が既に生じていたために、血圧が上昇していた可能性もあります。また、海外の報告でも高血圧そのものが腎がんの危険因子なのか、血圧を下げる薬を使うことが腎がんの発症に関係しているのかは判っていません。これからも研究を継続し、明らかな結果をお示しできるように努力していきます。

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