便通、既往歴(肝臓病、胆石・胆嚢炎、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、赤痢、腸チフス)と胆嚢癌死亡

柳生聖子


 胆嚢癌は年齢が上がるにつれ発生率が増加する、非常に予後の悪い癌です。

 日本の胆嚢癌死亡率は、諸外国にくらべ高率で、近年、その罹患率は上昇していますが、未だその原因は不明とされています。その理由として、増えているとはいえ胆嚢癌の発生率は低いため、症例数を集めての検討が困難であることが挙げられます。


 今回、JACC Studyのデータを用いて便通、既往歴(肝臓病、胆石・胆嚢炎、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、赤痢、腸チフス)と胆嚢癌死亡の関係を分析し、専門誌(Cancer Science誌)に発表しました結果を簡単にまとめてみました。


 1988年から1990年までの期間に全国45地区の約125,000人(40~89歳)を対象に、調査参加の同意を得た上で調査を行い、 1999年末まで胆嚢がん死亡を観察しました。

 最初の調査実施時に消化器がん(胃、食道、肝臓、膵臓、大腸)の既往のあるもの、追跡開始後2年未満に胆嚢がんで亡くなった方を除いた113,394人が今回の解析の対象となりました。


 追跡期間中に116人(男46人、女70人)の方が胆嚢がんで亡くなりました(人口10万対の胆嚢がんの粗死亡率は男10.07、女10.80でした)。いくつかの疾患について、「既往歴なし」群の胆嚢がんリスクが「既往歴あり」群に比べ、何倍になるか検討しました。


 肝臓病では2.28(95%CI: 1.24-4.21)倍と、胆嚢がん死亡リスクが有意に高くなりました (P<0.01)。 しかし、その他検討した胆石・胆嚢炎、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、赤痢、腸チフスの既往歴と胆嚢がん死亡との間には 関連を認めませんでした。


便通・便の性状と胆嚢がん死亡リスク

 「便通の頻度」について、「1日一回以上」群を基準とした場合、「2-3日に一回」群では1.35倍、「4日に一回以下」群の2.06倍と、胆嚢がん死亡リスクは便通の頻度が少ないほど、増加する傾向が認められ、この関係は統計学的にも意味のあるものでした 。


 一方、「下痢傾向なし」群を基準とすると、「どちらでもない」群0.71倍、「下痢傾向あり」群0.26倍と、「下痢傾向あり」群で著しく胆嚢がん死亡リスクは減少しました。


 大腸内で生成される2次性胆汁酸などの発癌作用のある物質は便の貯留が長いほど体内に吸収される量が多くなり、それが腸肝循環にのって胆嚢に到達することから、便秘傾向が強いほど胆嚢がんリスクが上昇したものと考えられます。下痢との関係に関しては明確ではありません。しかし、下痢傾向があれば通常便通頻度は高くなることから、胆嚢がんのリスクが便秘と関連することを示しているのかもしれません。

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