魚類・オメガ3系多価不飽和脂肪酸と循環器死亡

山岸良匡


 魚類はEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3系不飽和脂肪酸を多く含み、欧米では心臓病や脳卒中の予防に効果があることが知られています。しかし、日本人のように欧米人よりも数倍多く魚を食べるような食習慣であっても、欧米のように心臓病の予防効果があるのかどうかについては、これまであまりわかっていませんでした。今回は、魚類・オメガ3系多価不飽和脂肪酸を食べることが、日本人において心臓病や脳卒中による死亡にどれだけ影響するのかを調べました。(Journal of American College Cardiology誌 2008; 52:988-96 掲載)


魚類・オメガ3系多価不飽和脂肪酸の摂取は心不全の死亡を少なくする

 アンケートで日々の食生活についてお尋ねし、有効な回答が得られた約5万8千人の結果から、1日あたりの魚類・オメガ3系多価不飽和脂肪酸をとっている量を計算しました。その量に応じて、アンケートに答えた人を少ない人から多い人へ5つのグループに分け、その後の16年間に循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全など)で亡くなった人の割合を比べました。


 その結果、下図のように1日に食べる魚類・オメガ3系多価不飽和脂肪酸が増えるにつれ、全循環器疾患による死亡は直線的に減少し、魚やオメガ3系多価不飽和脂肪酸を最も多く食べるグループの循環器疾患による死亡率は、最も少ないグループに比べ約20%低くなっていました。


 この関係は特に心不全で強くみられました。下の図のように、魚やオメガ3系多価不飽和脂肪酸を食べる量が最も少ないグループから中間のグループにかけて、心不全死亡の危険度は直線的に約40%下がりました。しかし、それ以上食べるグループでは、さらに危険度が低下することはありませんでした。


この研究の意義

 日本人はもともと魚をたくさん食べる民族ですので、すでにほとんどの日本人が魚による心臓病予防の恩恵にあずかっており、日本人の中でより魚をたくさん食べても、さらに心臓病を予防する効果はないのではないかと考えられてきました。しかし最初の図のように、日本人であっても、魚をたくさん食べることでさらに循環器病を予防できる可能性が示されました。特に心不全死亡を予防する効果があることが、日本人で初めて示されました。


 今回の結果から、特に40歳以上の人では、魚類を積極的に食べることが将来の心臓病の予防に役立つ可能性が示されました。ただし、妊娠中の人が魚をたくさん食べることについては、魚に含まれる水銀による胎児への影響が十分わかっていないため、現段階ではお勧めできません。

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