環境と子どもの健康に関する北海道研究(北海道スタディ)

背景

環境要因が子どもの健康に与える影響、とりわけ環境化学物質の妊娠中曝露による次世代影響に世界的な関心が高まっていますが、わが国ではこれまで胎児期曝露に焦点をあて、出生前から追跡した研究はほとんどありませんでした。また、世界的にも環境化学物質の胎児期曝露に焦点をあてた次世代影響や因果関係は、未だ充分に解明されるには至っていません。

そこで、2001年から「環境と子どもの健康に関する北海道研究」を立ち上げ、胎児期の母の血液、出生時の臍帯血などを長期保存し、先天異常、体格、甲状腺機能、神経行動発達、アレルギー感染症など種々のアウトカムの調査を行っています。一方、環境化学物質の個体への影響の強弱は、曝露された個体の異物(薬物)代謝酵素類の遺伝子多型(SNPs)によって修飾されると考えられているため、同じ曝露濃度でも遺伝子の多型等のハイリスク群である者には、より低い濃度で予防的な対応を進めるための研究が重要となっています。

方法と主な結果

「環境と子どもの健康に関する北海道研究」は、札幌市内514人と北海道全域20、000人規模の2つのコーホートで構成されています。この研究の特徴は、①低濃度の環境要因の影響解明に焦点を当て、②器官形成期の母体血および臍帯血の採取保存により胎児期の曝露測定を行い、③先天異常、体格、甲状腺機能、神経行動発達、アレルギー感染症などのアウトカムを対象にリスク解析を行うことであり、さらに、④個人の感受性素因に着目し、化学物質代謝酵素、Ahレセプターなどの遺伝子多型も考慮したハイリスク群の解明を行っていることです。

「1病院ベース詳細コーホート」では妊娠23〜35週の妊婦とその出生児を前向きに追跡し、児の神経発達への影響を測るために詳細な対面調査を実施しています。「北海道大規模コーホート」は北海道全域の産科施設に協力をいただき、器官形成期に当たる時期の母体血採取と質問紙調査、出産時の母体血、臍帯血採取などを行っています。マーカー奇形55種を調べて、生後の発育やアレルギー、行動発達に関する環境要因との関係を追跡調査しています。

これまでに明らかになったことは、①母体血中ダイオキシン類のうち、男児では、特に総 PCDFs濃度、総PCDDs TEQ、総PCDFs TEQ、総PCDDs/PCDFs TEQ、総TEQが上昇すると出生時体重が有意に低下しましたが、女児ではこのような減少はなく、影響の性差が認められました(図1)、② 1歳6ヵ月までのアレルギー症状および感染症との関連をみると、母体血中ダイオキシン類の総 PCDFs濃度が高いほど中耳炎のリスクが上がる可能性が示され、男児では、より顕著でした(図2)、③喫煙では、母親のAhR遺伝子とCYP1A1遺伝子の特定の組み合わせで出生時体重への影響がもっとも大きく-315gとなり、CYP1A1遺伝子TC/CC型ではTT型よりも酵素活性が上昇しているため、中間代謝物であるジオールエポキシドなど発がん性物質の生成が促進され影響に個体差がみられたと考えられる(図3)、などです。

図1

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図2

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図3

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共同研究機関

北海道大学環境健康科学研究教育センター

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