HbA1cの測定方法変更が健康診査に与える影響

背景と目的

これまで血中HbA1cの測定には高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography; 以下HPLC)が標準的な方法として用いられてきました。しかしラテックス凝集法 (Latex agglutination immunoassay; 以下IA)などの測定方法は、迅速かつ安価で大量の検体処理に適しており、近年HPLC法から変更する施設が増加しています。IA法はHPLC法と比較して0.2%程度低い値を示すことが知られていますが、その差は、主として糖尿病患者に対する臨床上ではあまり問題視されてきませんでした。

北海道のある町での特定健康診査において、受託検査機関でのHbA1c測定方法がHPLC法からIA法に変更されたところ、その検査機関を受診した者のHbA1cの分布に大幅な変化が見られました。本研究は、特定健康診査において、HbA1c測定方法の変更が与える影響を明らかにすることを目的として行なわれました。

方法

2012年から2013年にかけて、HbA1cの測定方法がHPLC法からIA法に変更になった機関1と、HPLC法のまま変更のなかった機関2を、2年連続受診した337人(機関1:202人、機関2:135人)のデータを用いて解析を行いました。また追従実験として、27人の健常人の検体を用いて、機関1の変更前後で用いた2つの方法で同時にHbA1cを測定しました。

結果

機関1の受診者では、2012年から2013年にかけて、空腹時血糖値は増加していたにもかかわらず(91.7 mg/dL 対 95.2 mg/dL;P = 0.02)、HbA1cは減少していました(5.83% 対 5.50%;P < 0.001)。また、機関1を受診した202人のうち、97人は2012年にはHbA1cが5.6%以上でしたが、2013年にはHbA1c が5.6%未満の正常値になっていました(表)。機関2の受診者では、2012年と2013年にかけて、空腹時血糖値は変化がなく、HbA1cはわずかに増加していました。追加で行った健常人27人でのHbA1c値測定では、IA法での平均値は、HPLC法よりも低いものとなりました(5.19% 対 5.50%;P < 0.001)。

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 考察

既にHbA1cが高めである糖尿病患者に対して血糖のコントロールの評価指標としてHbA1cの測定値を個別に注視する臨床現場では、HbA1cの測定方法の違いによる測定値の違い(0.2%程度の差)はあまり問題視されてきませんでした。しかし、受診者の多くが健常で、しかも多くの数を取り扱う健康診査で、正常、糖尿病疑いまたは糖尿病の評価に用いる場合や疫学調査に用いる場合には、大きな誤分類が生じる可能性があることがわかりました。特定健康診査において、正常、糖尿病疑い、糖尿病の頻度が前年と比べて大きく変化した場合には、HbA1cの測定方法の変更による測定値の変化がないか確認することが推奨されます。