札幌市の小学生4,500名を対象とした住環境とアトピー性皮膚炎、喘息に関する調査

背景と目的

● アレルギー疾患有病率が増加していますが、小学生を対象とした住環境とアレルギー疾患との関連については十分に明らかとされていません。

●本研究の目的は、札幌市の小学生を対象に自宅住環境と喘息およびアトピー性皮膚炎との関連を明らかにすることです。

対象と方法

● 調査地:北海道札幌市

● 研究方法:横断研究

● 調査期間:平成20年11月から平成21年2月

● 対象者:札幌市で協力が得られた公立小学校12校の全校生徒6393名に調査票を配付し、回答が得られた4455名(回収率69.5%)

● 調査項目:自宅住環境14項目は択一式で回答いただきました。アトピー性皮膚炎と喘息の評価は、The International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)調査票を用いて評価しました。

・ アトピー性皮膚炎:「お子様は、今までに6ヶ月以上、出たり消えたりするかゆみを伴った皮疹がありましたか」、   「このかゆみを伴っ た皮疹は、最近12ヶ月の間のいずれかの時期にありましたか」、 「このかゆみを伴った皮疹は次のいずれかの場所に みられましたか。肘の内側、膝の裏側、足首の前面、おしりの下、首や耳や眼のまわり」の3項目

・ 喘息:「お子様は、最近12ヶ月の間に、胸がゼーゼー、またはヒューヒューといったことがありますか」の1項目

●調査票は対象となる児童の保護者が記入しました。

●統計解析:JMP9を用いてχ2、Mann-Whitney U検定、多変量ロジスティック回帰分析を実施しました。

● P<0.05を統計学的有意としました。

結論

●アトピー性皮膚炎の有病率は16.7%、喘息の有病率は13.4%でした(図1)。

 

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● アトピー性皮膚炎

屋外排気のない石油等の暖房器具(ポータブル石油ストーブ等)の使用、室内に目に見えるカビの生育がある、室内でカビ臭がする、冬季に窓の結露があると回答した児童のアトピー性皮膚炎有病率が有意に高い結果が得られました(OR:1.22〜1.56)。

● 喘息

集合住宅に住んでいる、築年数の増加、5年以内に自宅を改築した、カーペットを敷き詰めた部屋がある、ガス・石油等の暖房器具を室内で使用している、室内での喫煙者がいる、室内でカビ臭がする、5年以内に自宅で水漏れがあった、冬季に窓の結露があるあると回答した児童の喘息有病率が有意に高い結果が得られました(OR:1.10〜2.34)。一方、居間または寝室で換気扇等の機械換気を使用していると回答した児童の喘息有病率が有意に低い結果が得られました(OR:0.76)(表1)。

 

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考察とまとめ

● アトピー性皮膚炎と喘息の有病率は、ISAAC運営委員会(1998)が報告した日本の有病率と同程度でした。

● これまでに、小学生における喘息発症の要因として暖房の排気ガスであるNOx(窒素酸化物)、カビや結露を含めた湿気との関連が報告されているが、アトピー性皮膚炎で同様の関連を認めることを初めて明らかにしました。

●予防や対策として、結露およびカビの生育を防ぐ対策を講じるとともに、暖房の排気ガスを室外に放出させるなど、十分な換気を行うことが有用であると考えられます