Short sleep duration increases the risk of chronic kidney disease in shift workers

背景

近年、24時間体制の産業構造や交代勤務者の増加といった労働環境の変化を背景として、労働者の睡眠時間が減少していることが報告されている。特に交代勤務者では、非交代勤務者と比較して短時間睡眠者が多いことが指摘されており、交代勤務に伴う睡眠の問題は産業衛生上の重要な課題である。短時間睡眠は糖尿病や心血管疾患といった生活習慣病の発症リスクを高めることが多数報告されているが、短時間睡眠と慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease: CKD)発症との関連についてその報告は非常に少ない。また睡眠がCKD発症に及ぼす影響について、労働者を対象とする場合は交代勤務の有無によりその影響が異なることが予測されるが、先行研究では交代勤務の影響についての検討は行われていない。そこで本研究では、労働者における睡眠時間がCKD新規発症に及ぼす影響について明らかにすること、また睡眠とCKDの関連において交代勤務の有無が与える影響について明らかにすることを目的として研究を実施した。

対象と方法

対象は2003年4月〜2004年3月に職場健康診断を受診した自治体職員男女のうち、2008年までの5年間の追跡が可能であった男女3,600名とした。睡眠時間は自記式質問紙票により評価し、≦5時間、6-7時間、≧8時間の3群に分類した。交代勤務の有無については自記式質問紙票で調査し交代勤務「あり」と「なし」の2群に分類した。腎機能は推定糸球体濾過量 (estimated glomerular filtration rate; eGFR)により評価し、eGFR<60 mL/min/1.73 m2をCKDの定義とした。CKD新規発症リスクはCox比例ハザードモデルを用いて算出した。

結果

平均4.4年の観察期間中、182名(男性148名、女性34名)のCKD新規発症例が認められた。ベースライン時の平均年齢は47.0±6.7歳、eGFRの平均は84.3±13.1 mL/min/1.73 m2、平均睡眠時間は6.6±0.9時間点であった。睡眠時間、交代勤務のいずれにおいてもCKD新規発症との関連は認められなかった。次に交代勤務の有無により層別解析を行ったところ、5時間以下の短時間睡眠は交代勤務者においてCKD新規発症リスクを増加させたが、(HR = 4.22; 95%CI = 1.52−10.68)非交代勤務者においては睡眠時間とCKD新規発症との間に関連を認めなかった (HR = 0.52; 95%CI = 0.20-1.12) 。

考察

本研究の結果、交代勤務が短時間睡眠とCKD新規発症との間に修飾効果を持つことが示された。交代勤務と疾患の発症との関連においては睡眠以外の生活習慣や肥満、職業性のストレスが関与していることが報告されている。そこで本研究ではこれらの生活習慣、肥満度、職業性ストレスを調整要因として投入し解析を実施したが、交代勤務者でみられた短時間睡眠によるCKD発症リスク上昇は減弱しなかった。つまり、交代勤務者では短時間睡眠が生活習慣や肥満、職業性ストレスと独立してCKD発症リスクを増強させる可能性があることが示唆された。交代勤務により惹起される概日リズムの障害や交感神経活性亢進、代謝機能障害といった機序が短時間睡眠とCKD新規発症との関連に関与している可能性が考えられた。

結論

労働者における睡眠時間および交代勤務がCKD新規発症に及ぼす影響について検討した結果、交代勤務が5時間以下の短時間睡眠とCKD新規発症の間に修飾効果を持つことが示された。労働者において睡眠習慣の是正がCKD予防対策の一助となり得る可能性が示唆された。