便秘は大腸がんのリスクを高める?

小嶋雅代


 便秘と大腸がんとの関係はかなり以前より注目されてきました。大腸内に便が留まる時間が長くなれば、それだけ大腸の壁と便中の発がん性物質と接触する機会が増えますので、がんになりやすくなるのではないか、というのがその理由です。しかし、便秘と言っても程度は様々です。便通回数と大腸がんのリスクには関連があるのでしょうか。


 大腸がんの患者さんにがんになる前の様子を聞き、大腸がんに罹っていない人と比較して違いを検証する「症例対照研究」という手法で調べた調査では、「関連あり」との報告がいくつか出されています。しかし、便秘は大腸がんの症状の一つでもあるため、患者さんに便秘の方が多かったのは、既に病気の状態を反映していた可能性も否定できません。正確には大腸がんにまだ罹っていない一般の人を対象に調査し、その後の様子を追跡して検証することが必要です。これまでのところ、そのような研究は1982年から1996年にかけて、女性看護師を対象にアメリカ合衆国で行われた調査の報告が一つあるのみです。この研究の結果は「関連なし」でした。


 私たちはJACCスタディ対象地区のうちがん登録制度のある24地区に在住で大腸がんに罹ったことのない男性25,731人と女性37,198人を対象に解析を行いました。1997年までの間に649名の方が大腸がんに罹り、その内429名は結腸がんでした。


6日以上の便秘では大腸がんのリスクが増加

 女性では、「毎日便通がある」と答えた人に比べて、「2-3日おき」と回答した人は大腸がんおよび結腸がんに罹るリスクが3割低く、一方、「6日おきかそれ以上」と答えた人は、大腸がん、結腸がんのリスクが2.5倍高いという結果になりました。公表されている研究成果へ


 男性でも「毎日便通がある」と答えた人に比べて、「2-3日おき」と回答した人は大腸がんでは2割、結腸がんでは 5割リスクが低いという結果でした。人数が少ないので信頼性は高くありませんが、「6日おきかそれ以上」と答えた男性は、大腸がんで1.2倍、結腸がんでは1.9倍高いリスクが観察されました。


 男女とも、「毎日便通がある」と答えた人に比べて「4-5日に一回」と答えた人は、大腸がん・結腸がんのリスクは高くも低くもありませんでした。


 今回の調査の結果から、大腸がん予防という観点では、「2-3日に一回」の便通が最も望ましい、ということになります。しかし、今回の質問票では一日に何回も便通のある人を分けて解析することができませんでした。大腸がんの発生には頻回の便通や便の性状が影響している可能性もあり、さらに検討が必要です。


 なお、今回の調査では、「下痢をしやすい」か、「便秘薬を飲んでいる」か、という質問もありましたが、これらの回答と大腸がんリスクとは関連がありませんでした。今回の結果からは、便秘は大腸がんのリスクを高める可能性が示唆されますが、それは便通間隔が5日以上あくような重症の場合に限られるようです。

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